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最新RF広角レンズ「RF10-20mm F4 L IS STM」「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」2本の価格差は7倍!?名称と画角の謎に迫る

今回の記事は、キヤノンミラーレスカメラRFマウント用の交換レンズ 「RF10-20mm F4 L IS STM」 と 「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」 の比較検証です。

この2本のレンズ、名称を見ただけでは「スペックが似通っているけど後者の方が暗めのレンズだなー」くらいの感想しか湧いてきませんが、実は前者と後者では実売価格がなんと7倍差!金額だと30万円近くも差があります(2024年7月時点)。

えっそんなに!!??

ほんとそう思いますよね!
なぜこのような価格差が生まれるのか…そのあたりを作例とレビューも交えて、検証と解説をしていきます!

カメラに装着したようす

本来は同一のカメラボディに装着した写真を撮るべきですが、RF10-20mm F4 L IS STMはフルサイズ向けRF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STMはAPS-C向けのレンズのため、ボディもそれに準じたものを選択しています(なるべく似たような大きさのものを)。

左:フルサイズ、右:APS-C
左:フルサイズ、右:APS-C
左:フルサイズ、右:APS-C

レンズの大きさがかなり違いますね!フルサイズ用のレンズが太い!
特に3枚目の写真、RF10-20mm F4 L IS STMはレンズが太すぎるため、ボディが水平に置けずに浮いて傾いています。

レンズの違い

RF10-20mm F4 L IS STMは前玉がむき出しの出目金レンズです。
迫力がありますが、レンズプロテクターを装着できないため、扱いには少し気を使います。
一方、RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STMの方はいたって普通のレンズ…と思ったら、カメラに装着する側、マウント部の造りがプラスチック!並べて見ると非常にチープなのは否めません。

こういうところも価格差の一因でしょう!

左:フルサイズ、右:APS-C
左:フルサイズ、右:APS-C

写せる範囲の違い

続いて撮ってきた写真から違いを見ていきましょう。

今回紹介する2本のレンズは名称は似たような焦点距離を表していますが、先にも書いた通り、フルサイズセンサー用とAPS-Cサイズセンサー用の違いがあります。
そのため同じ場所で同じ10mmで撮影しても、写り方が大きく異なるのです!!

具体的にはAPS-Cの場合はレンズ名称にあるmm数の1.6倍、つまり10mmで撮っても実際は16mmで撮られた写真が保存されることになります。

フルサイズ
APS-C
フルサイズ
APS-C

レンズ表記の10mmで撮影しても、フルサイズとAPS-Cの写真には、このような差が現れます。

さて、疑問が出てきてますね。なぜ1.6倍?と。

長くなるので単純に書きますと、デジタルカメラが登場する以前のフィルムカメラに基準を揃えるための補正が1.6倍なのです。もう少し詳しくはこちら※
レンズの仕様では「35mm判換算」と書かれることが多く、一見すると難しく感じますが、APS-Cカメラで撮った時はレンズのmm数を約1.6倍した写真が撮れると覚えておけばOKです!

室内撮影は超広角レンズの魅力

上のお寺の例だと、もう一歩下がって撮影すれば全体像が撮れたのでは?と思った方もいらっしゃるはず。
しかし残念なことに、ここより後ろには「櫓(やぐら)」が設置されていて、これ以上距離をとることができないのです。
つまり状況によってはAPS-Cサイズだとどうやっても撮れない画角が存在してしまいます。その最たる例が室内写真です。

室内は壁に囲まれた空間です。櫓の例と同じく、自分の足で距離を調整できない状況です。
つまり手持ちのレンズで捉えきれない場合は、より広角域を映せるカメラおよびレンズに交換するほか、有効な手段がありません。

フルサイズ
APS-C
フルサイズ
APS-C

16mmでも十分広くは撮れますが、フルサイズの10mmだと天井や床など、より多くの情報が収められているのが分かると思います。


ここまでいくつか例をあげてきましたが、APS-Cの10mm(35mm判換算で16mm)では絶対に撮れない、フルサイズの10mmでしか撮れない写真があることが、分かっていただけたと思います。

解像感の違いや逆光耐性の違い、レンズ自体の明るさの違いなど、2本のレンズにはまだまだ差があります。
しかし個人的にですが、価格差が生まれる理由はほぼ「撮れる画角の違い」だと考えます。

実はRF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STMにも強みがある

高価なRF10-20mm F4 L IS STMがすべてにおいて優れていると思っていましたが、調べて見ると意外にも近接撮影能力はお安いRF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STMが優れているという、大発見がありました。

次の写真をご覧ください。
近接撮影の違いはこのくらい…いやいや、結構な差がありますよね!
被写体に思いっきり近づいて撮るのが好きな方や遠近感を強調した写真が好きな方には、RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STMが超魅力的なレンズになります。

RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM 近接撮影
RF10-20mm F4 L IS STM 近接撮影

とは言え「レンズが明るく一定である」ことや「超広角10mmでの撮影が可能」は、RF10-20mm F4 L IS STMのみに許された性能です。

言い換えると、これらが不要なら、RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STMも十分選択肢に上がってくるのではと思います。

雑多なお写真

超広角で撮影した写真をざっと掲載します。
縦写真は横に2枚並んでいます(わかりづらい)。もちろん拡大可能です。






カタログスペックの違いについて

それぞれのレンズのスペックを見てわかることを書き添えておきます。
内容がつまらないので見出しだけ流し見でどうぞ!

1.使われているレンズ技術が違う

キヤノン公式の「レンズテクノロジー」解説ページによると、以下のような記述があります

基本的に写真用レンズは、数枚の球面レンズの組み合わせによって構成されますが、設計技術がどんなに向上しても、球面レンズには理論上、平行光線を完全な形で一点に収束することはできないという、幾何学上の問題があり、実現できる描写力に限界がありました。

この描写力の限界を突破するために「非球面レンズ」や「UDレンズ(スーパーUDレンズ)」と呼ばれる特殊レンズが開発されました。
これらの特殊レンズが多く使われることで画質の劣化が極力抑えられ、高品質な製品となります。
そして同時にコストがかかるため高価になるわけです。

2.使われているコーティング技術が違う

RF10-20mm F4 L IS STMには、ASC(Air Sphere Coating)やSWC(Subwavelength Structure Coating)と呼ばれる特殊コーティングが施されていて、フレア・ゴーストを抑制する効果を担っています。
逆光時でも安心して撮影に臨め、作品作りに没頭できるでしょう。

これらのコーティングも上述と同じく、多く使われているレンズは高品質であり、かつ高価になります。

下に主な性能比較をまとめてみました。

  RF10-20mm F4 L IS STM
RF10-20mm F4 L IS STM
RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM
RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM
発売日 2023年10月27日 2023年12月 8日
絞り羽枚数 9枚 7枚
特殊レンズ スーパーUDレンズ1枚、UDレンズ3枚 UDレンズ2枚
特殊コーティング ASC、SWC、フッ素コーティング -
最短撮影距離 0.25m AF時:0.14m (10mm〜18mm時)、MF時:0.086m(10mm時)
最大撮影倍率 0.12倍(20mm時) AF時:0.23倍(18mm時) 、MF時:0.5倍(10mm時)
フィルター装着 不可※
最大径×長さ(約) 83.7mm×112mm φ69mm×44.9mm(収納時)
質量(約) 570g 150g
実売価格(2024年7月時点) 約34万円 約5万円
レンタル料金2泊3日(2024年7月時点) 15300円 4590円
※ 後部ゼラチンフィルターホルダーに差し込むことで使用することも可

最後に

以上、レンズの名称が似ていても、さまざまな違いが値段に繋がっている!というお話でした。
いつものことながら長くなりましたが、APS-C用レンズはレンズ表記のmm数が1.6倍になる、と言うところが最大のトラップであり、今回の記事のポイントです!
知らなかった方はぜひ覚えて帰ってくださいね。

まとめるとこんな感じでしょうか。

10〜15mmの超広角で撮影したい
F4固定の明るさ
などがRF10-20mm F4 L IS STMを選ばざるを得ない理由です。フルサイズカメラが必要なところもやや敷居が高くなりますね。

接写する機会が多い
小型軽量が正義
APS-Cサイズカメラで使う
などがRF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STMを選ぶ理由です。フルサイズと比べて安価にすますことができるのも良い点かも。

あとはセルフィーが多い方はRF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STMの方が断然使いやすいと思います
mm数が小さいほうが画角が広くなって収めやすいとはいえ、RF10-20mm F4 L IS STMは大きく重すぎます。
小型軽量は重要な性能の1つです。

ちなみにRF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STMはフルサイズセンサーのカメラでも使えます(※)。フルサイズカメラでも1.6倍にクロップされますけど、出費を抑えつつ広角撮影を楽しむにはもってこいです。
※デジタル一眼レフカメラのときはAPS-C用のレンズ(EF-Sマウント)はフルサイズ(EFマウント)で使えなかったのです(マウント部の造りがちょっと違かった)

最終的にはお財布と相談になるわけですが、特にRF10-20mmの方はほいほい買うにはなかなか勇気のいるお値段‥。
それでも超広角が必要になったときや、とりあえず試してみたいけど年に数回しか使わない方など、レンタルならいくぶん気軽に利用できますので!
どうしてものときはぜひ、APEX RENTALSでレンタルしてみてください!(宣伝)

個人的な感想になりますが、どちらのレンズにも強み弱みがあって、記事を作成していてそれなりに楽しめました!カメラ・レンズ2セットで撮影に行くのは割と大変で苦痛でした…夏場の撮影は地獄(汗だく)。 本音と建前が逆…

(※) めちゃくちゃわかりづらい説明になりますが、もう少し掘り下げますと…
フィルムカメラでは一般的に35mm(36x24mm判)フィルムが用いられていたようなのですが、
アナログフィルムを用いたカメラからデジタルカメラに移り変わった際、フィルムの役割は撮像素子(センサー)に引き継がれました。
当時、センサーは非常に高価なものであったため、フイルムと同等の大きさ(フルサイズ)のセンサーではなく、コストを抑えたやや小さめサイズの「APS-C」センサーが採用されました。
このAPS-Cセンサーを採用したR10は撮像素子がおおまかに22x15mm(正確には約22.3x14.9mm)になり、今まで使ってきたレンズで写真を撮っても、今までと同じ画角で撮れません。
そのためレンズ表記のmm数を1.6倍することで、フィルムカメラ(フルサイズカメラ)と基準を合わせたのです。
(フルサイズカメラであるR8は、フィルムカメラと同等の撮像素子(36x24mm)のためそのままの値で良い!)
(余談ですが、フルサイズより大きな中判センサーのカメラだと0.8倍します)