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AeroCaster Switcherを使ったかんたんワイヤレススイッチング

AeroCaster Switcherを使ったかんたんワイヤレススイッチング

V-02HD MK II」は、コンパクトなビデオミキサー「V-02HD」の後継機として登場した、ストリーミングビデオミキサーです。
今回はV-02HD MK IIではなく、同時期に登場したiPad用アプリ「AeroCaster Switcher」をご紹介したいと思います。
使ってみないとわからない、仕様に載ってない箇所を詳しく解説していきますので、長くなりますがお付き合いください!

もくじ
AeroCaster Switcherとは
  AeroCaster Switcherを使うために必要なもの
AeroCaster Switcherのアクティベーションを行う
AeroCaster Switcherを使ってみよう
  MEDIAに100個、SCENEに30個、それぞれ登録可能
  SCENEで画面の構成と素材の追加表示が可能
   DSKで上に重ねて表示
   COMPOSITIONで出力画面をデザイン
AeroCaster Switcherにさまざまな映像を入力してみる
  AeroCaster Cameraを使ってみよう
  ブラウザ認証を使って入力してみよう
   画面全体
   アクティブウインドウ全体
   ブラウザのタブ
   ブラウザ認証でビデオキャプチャデバイスを使ってみよう
映像を出力しよう
  出力は2種類
  スイッチングの方法は2種類
まとめと注意点
  AeroCaster Switcherで気を付けること
  AeroCaster Cameraで気を付けること
  PCからの入力で気を付けること

AeroCaster Switcherとは

AeroCaster Switcherはスイッチングやミキシングなどが行えるiPad専用の無料アプリケーションです
入力はAeroCaster Cameraを使ったカメラの映像や、PC画面などを最大5つまで管理できます。
V-02HD MK IIのような入力が少ないミキサーなどでは、アプリを使うことで最大4つも入力ソースを増やすことができます(※)ので、使わない手はないはず。
※ 実際は5入力増やせますが、元のスイッチャーのINPUTを1つ使ってつなぐため、5-1=4入力です

AeroCaster Switcher導入時の画面
AeroCaster Switcher導入時の画面

AeroCaster Switcherを使うために必要なもの

AeroCaster Switcherはまず初めにアクティベーション(認証)を行う必要があります。手順は次節で解説しますが、いくつか条件がありますので、以下箇条書きにしました。

  • 対応するビデオスイッチャー、ミキサー類
  • iPadOS 14.6以降のiPad(AppleA12ZもしくはA13以降推奨)
  • Apple社製のHDMI出力アダプタ
  • 高速かつ安定したWi-Fiネットワーク

以下補足です。
1つ目、APEX RENTALSにて取り扱い中の対応製品はこちらです。

念のため2種類、V-02HD MK IIとUVC-01でアクティベーションを試しましたが、どちらも問題ありませんでした!(アクティベーションの手順は次節参照)

2つ目、AeroCaster Switcherを使用するiPadは、できるだけ新しく高性能なiPad、なるべく第三世代以降のiPad Pro系を推奨します。お持ちでなければレンタルをどうぞ!
iPadのレンタル

3つ目、iPadから映像出力するにはアダプタが無いとできません。こちらもレンタルございます。
iPad対応HDMIアダプタのレンタル

4つ目、ネットワークはかなり重要です。
AeroCaster SwitcherはWi-Fi環境によって、画質を自動調整します。
画質の目安となるビットレートは選べますが、それに満たないとまともな表示は期待できません。
Wi-Fi 5の5GHz帯に対応できる環境以上が理想です。もちろんWi-Fi 6でもOK!

詳しくは公式ページ「AeroCaster Switcher SUPPORT(別窓が開きます)」もぜひご覧ください。

AeroCaster Switcherのアクティベーションを行う

それではアプリを使えるようにするためにアクティベーションを行いましょう。
手順としては以下のながれです。

  • iPadにアプリをインストール
  • PCと対応製品をUSBで接続しておく
  • PCとiPadを同一ネットワーク(無線、有線問わず)に繋いでおく
  • iPadでアプリを起動し「アクティベーション開始」をタップ
  • iPadに表示されたURLをPCブラウザで開き「認証」ボタンをクリック
  • カメラのアクセスなどを求められますが、すべて許可をすれば完了

画像出典:AeroCaster Switcher 取扱説明書(赤文字はこちらで追加)

ざっと書いてしまいましたが、機器をUSBで繋いでおくiPadとPCを同じネットワーク上に繋いでおくという点に気を付ければ、難しいことは無いでしょう。


iPadでAeroCaster Switcherを初めて開くとアクティベーションの案内が表示される

AeroCaster Switcherを使ってみよう

アクティベーションが完了したところで、さっそくAeroCaster Switcherを使ってみましょう!

AeroCaster Switcherでは多数のことが行えますので、ちょっと(!?)長くなりますがTipsをまじえて1つ1つ解説していきたいと思います。
なおAeroCaster Switcherの基本的な使い方は以下のながれです。

  • INPUTでカメラ映像入力
  • MEDIAで画像などの素材を登録
  • SCENEで映像と素材を組み合わせる
  • 最終出力させる

MEDIAに100個、SCENEに30個、それぞれ登録可能

上の画像からすると最初にINPUTを見るべきですが、INPUTの項目はiPhoneやPCといった別の端末からの入力が主となり煩雑になるため、まずはMEDIAから見ていくことにします。

MEDIAは画像や動画といったデータファイルを登録しておく場所です。MEDIAにはiPad内の画像&動画を合計100ファイル登録しておくことができます。
登録したものはそのまま最終出力表示させることが可能ですし、後述のSCENEで使えばより効果的に出力することもできます。

画像はアルファチャンネルの値を保持するPNGファイルで保存されるため、“抜き”処理をしておけばテロップロゴのような使い方も可能です。

動画は再生と停止のみ操作可能で、シークバーがないため頭出しや早送り巻き戻しなどはできません
当然ループ再生もできませんので、ずっと流しておくといった演出はできません。

SCENEで画面の構成と素材の追加表示が可能

SCENEではINPUTで入力した映像や、MEDIAで登録した素材、そしてテキストなどを組み合わせて、出力用の画面を作成することができます。

SCENEにはプリセットとして、
 ・CAM1とCAM2を使ったPinP(小窓)、
 ・CAM3とCAM4を使ったスプリット(左右分割)と、
 ・テキストを使ったLIVE表示
が用意されています。
CAM1〜4を使ったクアッド(4分割)表示も新規作成ですぐ使えますので、いずれかを使えばそれっぽい最終出力はとても簡単に作れます。

これらの機能はDSK(ダウンストリームキーヤー)COMPOSITION(コンポジション)と呼ばれるものですが、文字面だと難解さが際立ってしまっています。次はできるだけかみ砕いて見ていきましょう。

DSKで上に重ねて表示

DSKとは、出力する映像の上に、さらに素材を重ねて表示するための機能です。
AeroCaster Switcherでは画像、動画、テキストを、DSKの素材として使用することができます。
メインとなる映像をベースに、2枚まで重ねて表示させることが可能です

先に説明したMEDIAの項目では、素材を登録してそのまま表示させるだけでしたが、SCENE内のMEDIA追加では、表示位置や大きさを調整することができます。

MEDIAではなくTEXTを選択すれば、テロップのように表示させることができます。
文字サイズは入力した文字数や改行数に応じて自動変更されますが、テキストに対して装飾、例えば太字にしたり、ボーダーを付けたり、グラデーションをかけたり、といったことは一切できません
なお最初から半透明の下地が用意されています。

画像、動画、テキスト共通の仕様として、ピンチ操作でサイズ変更、ドラッグで表示位置変更は可能(回転はできません)です。

またこれらの操作は最終出力中でも可能で、SCENE内で編集・保存すると変更点が即座に適用されます。

COMPOSITIONで出力画面をデザイン

COMPOSITION出力用の画面を設定するところです。
別段難しいことはありません。
上で紹介したPinPSPLITなどのプリセットを選んで、どの枠にどのカメラの映像を表示させるか、選択するだけです。
ただしサイズや位置調整できるのはPinPの小窓だけで、それ以外は調整できません


映像の仕切り(ボーダー)の色や太さは変えられます

AeroCaster Switcherにさまざまな映像を入力してみる

続いてお待ちかね、INPUTの項目です。INPUTでは以下の方法で映像入力が可能です。

  • iPad自身のカメラを使う
  • アプリ「AeroCaster Camera」を使う(iPhoneなどiOSデバイスのみ)
  • ブラウザを使う(タグ/ウインドウ/画面全体、PCのみ)
  • 端末のビデオキャプチャデバイスを使う

1つ目、AeroCaster Switcherを動かしているiPad搭載のカメラも、映像入力の1つとして扱うことができます。
しかし母艦となるiPadはすでにアプリの実行で負荷がかかっている状態ですので、パフォーマンスの観点から考えるとあまり積極的に使わない方が良いかもしれません。

2つ目からは以下、順に見ていきましょう。

AeroCaster Cameraを使ってみよう

AeroCaster Cameraは、AeroCaster Switcher上でもカメラ操作ができるようになる、カメラアプリです。
2021年10月時点ではiOS専用のアプリですが、2022年以降、Androidにも対応する予定があるようです。

AeroCaster Switcherへの入力はかんたんで、AeroCaster CameraをAeroCaster Switcherと同一ネットワーク上で起動させると、Switcher側のINPUTに「サテライトカメラ」として表示された端末名を選択するだけです(1つ前の画像参照)。

AeroCaster Switcher、AeroCaster Cameraの両アプリ上では、iPhoneやiPadのカメラ機能に基づいた操作、設定が可能です。

ブラウザ認証を使って入力してみよう

AeroCaster Cameraを使えないデバイスからは、ブラウザによる認証を使った方法で入力が可能です。
同一ネットワークに属している必要がありますが、同一ネットワークならWi-Fi接続ではなく、有線接続でもOKです(いずれにせよルーターを介した通信が必須だと思います)。
この機能を使うには、アプリをアクティベーションさせた時と同じようなURL認証処理が必要で、さらにPCブラウザを使う場合は認証時に使った機器をUSBでつないでおかないと利用できないみたいですのでご注意ください。

URLをPCブラウザで開くと次のような画面になります。
映像として送信するソースを「ビデオキャプチャデバイス」「画面共有」から選べます。

画面全体

さっそく画面共有方法の選択から見ていきましょう。
まず1つ目、こちらは文字通りPCの画面全部を送信するモードです。
マルチモニターとして複数台のモニターを使用している場合は、すべての画面ではなく、いずれか1画面を選ぶことになります。
このモードではブラウザのタブやメニューはもちろん、デスクトップのタスクバーも送信されます

アクティブウインドウ全体

2つ目、ブラウザに限らず、ディレクトリやソフトウェアなどのウインドウにも対応するモードです。全画面表示したウインドウも選択可能です。
ブラウザのタブやメニューなど、メインのコンテンツ以外も送信されます

なお選択したウインドウがアクティブじゃなくなるとアプリのINPUTが真っ黒になりますので注意が必要です。

ブラウザのタブ

3つ目、アクティブウインドウ全体とは違いブラウザのコンテンツのみ表示されるモードです。
こちらはブラウザを最小化したり、違うタブに切り替えても、AeroCaster Switcher上で真っ黒にはなりません。最初に選んだタブの内容が表示されたままになります。

ちなみにウインドウキャプチャで軽めのゲームや、タブキャプチャでYouTubeの動画を流すことは可能でした。
ですが、回線品質次第で映像が乱れますので、PCから入力はウェブページやエクセルなどに留めておいた方が無難だと思われます。

ブラウザ認証でビデオキャプチャデバイスを使ってみよう

続いてビデオキャプチャデバイスの選択の方を見てみましょう。
これはそのデバイスが持つキャプチャ系のデバイスから任意に選んで映像送信することが可能なモードです。
キャプチャ系のデバイスとは例えばウェブカメラなどです。

この方法のキモは、PCに限らないという点です。

Android端末は、AeroCaster Cameraは使えない、ブラウザの画面共有も利用できない、という状況ですが、この方法だと端末のカメラの映像が利用できるのです!
もちろんカメラがいくつかある場合は選ぶことができます(フロント、リア、広角、望遠、などなど)。

ご紹介してきたブラウザ認証による入力方法は、送信するソースを選んだあとAeroCasterに送信開始のボタンを押すことで、初めてAeroCaster Switcherに入力されます。
ソースを選んだだけでは自動で送信されませんのでご注意ください。

映像を出力しよう

AeroCaster Switcherに入力された映像は、Apple社製のHDMI出力アダプタを使って機器と接続するか、USBビデオクラスでPCと接続するかが最終的な目的になると思います。
いずれの場合もアプリからどのような画面を出力するか選ぶことができます。

出力は2種類

AeroCaster Switcherからの出力は、PREVIEW(プレビュー)画面またはPPROGRAM(プログラム/本番)画面のいずれかで設定することができます。
言葉でいうとわかりにくいかもしれませんが、iPadのアプリ上では、左側がPREVIEW、右側がPROGRAMですので、いずれかの画面が出力されるということです。

スイッチングの方法は2種類

AeroCaster Switcherには2種類の切り替えモードがあります。
PREVIEWとPROGRAMをシーン選択と同時に切り替えるか、PREVIEWにいったん表示させ任意のタイミングでPROGRAMと切り替えるか、のいずれかです。

PGM DIRECTがON状態になっていると、プレビューを介さずに直接本番画面に適用されます。OFFの場合はTAKEを押すことでPREVIEWがPROGRAMへ適用されます。

またおなじみの切り替え効果も設定できます。
瞬時に切り替わる「カット」、プレビューとプログラムが混ざって切り替わる「ミックス」、スライドで切り替わる「ワイプ」の3種類から選べます。
MIXは切り替え時間(0.10〜1.00秒)、WIPEは切り替え時間と方向(縦か横か)と、若干ですが任意に設定可能です。

黒フェードさせることも可能ですが、黒以外の色への変更や切り替え時間の設定はできません。

まとめと注意点

30分程度、V-02HD MK IIのUSBのストリーム機能を使って、YouTube配信を行ってみました。
問題なく配信は終了したのですが、iPhoneもiPadも、V-02HD MK II本体も、かなりの熱を帯びていました。
バッテリーの消耗も普段より大きいと感じたため、もしアプリを使って何時間も運用したいとお考えなら、給電と冷却の工夫が必要だと思います。

その他、気を付けたいポイントをまとめました。

AeroCaster Switcherで気を付けること

1.AeroCaster Switcherを表示しているときは、コンソール画面ではなく、設定に応じた映像(プレビューもしくはプログラム)が出力されますが、アプリを切り替えるとその画面が出力されてしまいます
例えばホーム画面を表示させるとホーム画面が出力されますので、誤操作には十分ご注意ください。

2.クロマキー、ルミナンスキーといった、透過して合成する機能はありません。
クロマキー合成は2022年対応予定みたいです

3.コンポジションは決められた枠内に応じてCAM1〜5の(真ん中を中心に)、映像ソースがトリミングされて表示されるため、例えば映像ソースの右上部分を中心に表示させるといったことはできません。
またAeroCaster Cameraからの入力は横長の映像になるため、スプリットの場合は映像の左右が全く表示されません。

4.画面共有は主にPCブラウザ向けの機能になると思いますが、認証させた機器が使用可能(USB接続して電源ON)状態でないと使えません!!
先述している内容ですが、実際に機器を外したら使えなくなったので、少し焦りましたので、再度警告です。

認証時、有線無線関係なくこういった仕様みたいですのでご注意ください。

AeroCaster Cameraで気を付けること

1.映像の質は通信の質に大きく左右されます。
通信環境が悪く、通信速度が安定しないとき、あるいは安定していても速度が遅いときは、AeroCaster Cameraから送られた映像の画質は大幅に下がります(YouTubeの240kbpsより悪いくらい)。
また表示されないこともあるようです(この場合はアプリでビットレートを下げてから再接続を試します)。
カメラとして使う端末のスペックを気にするよりも、通信の環境に投資するようにしてください。

公式でも詳しく注意喚起があります。
AeroCaster で利用する推奨ネットワーク環境について(公式ページが開きます)

2.AeroCaster Cameraを出力している端末で、AeroCaster Camera以外の画面にした瞬間に、AeroCaster Switcher上で画面が固まります。すぐAeroCaster Cameraを立ち上げ直せば再度接続が行われます。
またAeroCaster Cameraは横表示時のみでしか使えません。iPhoneなど傾けたりしても追従しません。(180度回転は追従します)

3.AeroCaster Cameraは2021年10月の時点ではiOSが搭載されたiPhoneやiPad用のアプリとなります。
Android用は2022年以降のリリースとなるようです。

Android端末からはアプリを使わずに認証で入力できますが、AeroCaster Cameraからの入力とは少し勝手が違い、90度傾けたりもできます。

PCからの入力で気を付けること

1.AeroCaster Cameraと違い、いろいろなものが利用可能なPC入力ですが、一度ソースを選んでしまうと、それ以外のソースには切り替えできません
例えばアクティブウインドウを表示させていたけど、やっぱり1つのタブの内容だけを表示させたい、となったときは、AeroCaster Switcherで入力中のINPUTを一度削除し、新たに選びなおして、AeroCaster Browser Senderで認証の処理をしなおす必要があります

2.ブラウザ認証にて、アクティブウインドウ全体として送信しようとしたとき、そもそも選択できない(選択肢に上がってこない)ソフトウェアもあるようですので、PC内のあらゆるものが映像として送信できるわけではないみたいです。
条件は不明です